アジャイル開発手法は、短いイテレーション期間で機能的で使用可能なソフトウェアを繰り返し開発することを目指しています。しかし、スピードを重視するあまり品質が犠牲になることは避けたいものです。本記事では、アジャイル開発においても品質を確保するための5つの実践的な方法をご紹介します。
テスト自動化の導入
テスト自動化は、アジャイル開発における品質確保の要です。手動テストに頼るだけでは、リグレッションの発生を防ぐことができません。自動化されたユニットテスト、インテグレーションテスト、UIテストを導入することで、新機能の実装時にも既存の機能が正常に動作していることを継続的に素早く検証できます。テスト自動化により、デプロイの度に手作業でテストする必要がなくなり、リリース前の総合テストにも時間を費やさずに済みます。
テスト自動化の実践ポイントとメリット
- ユニットテストを習慣化する
開発者がコーディングと同時にユニットテストを作成する習慣を身につけることで、低レベルの品質が担保されるようになります。テスト駆動開発を実践することもできます。 - テストコードに対するレビュー実施とリファクタリングの促進
コードレビューの対象にテストコードも含めることで、テストの質とメンテナンス性を高められます。テストコードのリファクタリングも行います。 - テストデータの自動生成の実現
モックデータやスタブを自動生成するツールを活用することでテストデータ準備に手間を省きます。 - 継続的インテグレーションへのテスト実行の組み込む
コミットの度にユニットテストとインテグレーションテストを自動実行させることで問題の早期発見につなげます。
継続的インテグレーションと継続的デリバリー(CI/CD)
コードの変更が頻繁に行われるアジャイル開発では、継続的インテグレーションと継続的デリバリーが不可欠です。継続的インテグレーションにより、チーム間でコードの共有と統合が頻繁に行われ、インテグレーションの遅延や複雑化を防ぎます。継続的デリバリーでは、コードの変更がリポジトリにプッシュされるたびにビルド、テスト、デプロイが自動的に行われ、本番環境への投入が迅速に行えます。
アジャイル開発における継続的インテグレーション(CI: Continuous Integration)と継続的デリバリー(CD: Continuous Delivery)は、ソフトウェア開発プロセスを効率化し、品質を高めるための重要なプラクティスです。
継続的インテグレーション (CI: Continuous Integration)
継続的インテグレーションは、開発者がコードを頻繁にリポジトリに統合するプラクティスです。各統合は自動化されたビルドとテストプロセスを通じて検証され、コードの一貫性と品質を確保します。
- 頻繁なコード統合: 開発者は少なくとも1日に数回、できるだけ頻繁にコードをリポジトリにコミットします。
- 自動化されたビルド: 各コミットは自動ビルドシステムによってビルドされます。
- 自動テスト: ビルド後に自動テストが実行され、コードの品質を確認します。テストにはユニットテスト、インテグレーションテストなどが含まれます。
- 迅速なフィードバック: 問題が発生した場合、すぐに開発者にフィードバックが返され、早期に問題を修正できます。
継続的デリバリー (CD: Continuous Delivery)
継続的デリバリーは、コードがリリース可能な状態で常に維持されるプラクティスです。CIの上に構築され、自動化されたテストとデプロイメントプロセスにより、コードを本番環境に頻繁かつ信頼性をもってリリースできるようにします。
- リリース準備が常に完了: どの時点でも、リリースできる状態のコードベースが存在します。
- 自動化されたデプロイメント: ステージング環境や本番環境へのデプロイメントが自動化されています。手動のステップを減らし、リリース作業を効率化します。
- 頻繁なリリース: 新機能や修正を迅速にユーザーに届けることができます。これにより、フィードバックサイクルが短縮され、製品の改善が加速します。
- 継続的なテスト: 継続的なテスト(エンドツーエンドテスト、パフォーマンステスト、セキュリティテストなど)が行われ、コードの信頼性を確保します。
継続的インテグレーション/デリバリーの実践ポイントとメリット
- リポジトリ管理ツールを活用する
チーム間でコードの共有と統合を頻繁に行えるようになります。 - ビルド、デプロイ、テストプロセスが自動化される
人手による作業ミスやコストを抑制します。 - 本番環境とのギャップを解消する
ビルドの成果物を本番環境とのギャップなくすぐにデプロイできるようになります。 - 本番環境へのゼロダウンタイムデプロイ
システム・サービスを停止することなくデプロイが行えるため、リリース時の影響を最小限に抑えられます。 - フィードバックループが強化される
デプロイの迅速化によって、顧客からのフィードバックループが強化されます。
レビューと是正措置
アジャイル開発においても、不具合の早期発見とリスクの低減を目的としたコードレビュー、デザインレビュー、テストレビューは必要不可欠です。コードレビュー、デザインレビュー、テストレビューの実施は、アジャイル開発におけるもうひとつの重要な品質確保策となります。コードの見直しを行うことで、コーディングスタイル、設計、テスト妥当性などについて複数人で評価・助言などの相互チェックを実現できます。これらのレビューを経ることで、後工程での修正の手間を大幅に削減できます。
レビューと是正措置のための実践ポイント
- ピアレビューの文化が醸成される
複数人による評価が促され、ピアレビューの文化が醸成されます。 - レビューツールを活用し、レビュープロセスを標準化する
作業効率とカバレッジを向上します。 - コーディングスタンダードを実現する
デザインパターンの徹底を図ります。 - スタティックコード解析を活用する
構文の欠陥を検知します。 - 指摘事項の修正、確認を徹底する
レビューで指摘された事項については、修正と再確認を必ず行います。
チームの密な連携
アジャイル開発では、手法を単純に導入するだけでなく、チームの密な連携がとても重要です。開発者、テスター、製品オーナー、その他の関係者が緊密にコミュニケーションを取り合い、要件を共有し、問題解決に協力し合う体制が重要になります。デイリースクラム、ペアプログラミング、レビュー会議など、チーム内での頻繁な対話を通じて、ビジョンの共有と課題の早期発見が可能になります。
チーム連携のためにの実践ポイント
- プロダクトオーナーを巻き込む
プロダクトオーナーをチームに参加させ、顧客の視点を開発プロセスに反映させます。 - Face to Face コミュニケーション機会を確保する
デイリースクラム、レビュー会議など、チーム内で頻繁に対面でコミュニケーションを取る機会を設けます。 - KPTなどのチームレトロスペクティブを実施する
KPT(Keep、Problem、Try)などのチームレトロスペクティブを行い、改善の機会を見つけ出します。 - チームインセンティブを導入する
チーム単位でのインセンティブを設け、チームの一体感とモチベーションを高めます。
顧客との緊密な協業
アジャイル開発では、顧客との緊密な協業が品質を左右するカギとなります。アジャイル開発で機能の優先順位付けや方向性の決定において顧客の意向を常に反映させるなど顧客を開発に深く関与させることで、顧客の本当のニーズに合ったシステムを構築できるようになります。また、リリース後の早期フィードバックにより顧客の使用状況を観察し、実利用上の問題を迅速に把握し改善につなげることも重要です。
顧客との協業のための実践ポイント
- 顧客と密なコミュニケーションを実施する
企画の早期段階から顧客と密にコミュニケーションを取り、要件や優先順位を決定します。 - 顧客の業務プロセスを理解する
実際の利用シーンを想定した機能設計を行います。 - 顧客からのフィードバックを収集し、対応する
リリース後は顧客の使用状況を詳細に観察し、フィードバックを収集・分析して改善に活かします。 - 顧客自身をテストへ参加させる
顧客自身にテストに参加してもらい、別の視点からの検証を行えるようにします。 - 顧客ビジョンを共有し、ロードマップを策定する
顧客ビジョンとロードマップを共有し、今後の開発方針を一体となって検討します。
まとめ

アジャイル開発で品質を確保するためには、これまで説明してきた5つの方法を実践することがポイントとなります。これらを徹底することで、開発スピードと品質の両立が可能になります。
- テストの自動化と継続的インテグレーション/デリバリー
- レビューと是正による品質向上サイクル
- チーム内の密な連携
- 顧客との緊密な協業
本記事で紹介した方法を参考に、自社のアジャイル開発の品質確保に是非とも取り組んでみてください。

